長野、南牧村は、山梨との県境にある。
高原には農地が広がり、レタスなどの高原野菜が育っていた。
ここで夏に、イチゴを作っているとは考えられないであろう。
菊池さんは、この地で、夏イチゴを栽培し始めたパイオニアなのである。
今では、季節に関係なくショートケーキにはイチゴが乗っていたりするので、
考えてみれば、どこかで日本国内では年中、イチゴは作られているのである。
ナビの指示する場所に着いたのだが、周りを見回しても、
菊池という表札は見当たらない。
やむを得ず、菊池さんに電話した。
「あー、ナビ入れると全然、違うとこ、案内されるんだよ」
ナビのあるあるである。
口頭で説明を受け、大きなビニールハウスを目印に車を走らせる。
「あった。発見。」
それは、ビニールで出来たハウスというよりも、巨大なグラスハウスであった。
ガラスみたいな素材でできていた。
菊池さんはハウスの脇にある、事務所の入り口に立っていた。
私は遅刻したことをお詫びし、事務所に入った。
あいさつの後、今までの経緯と私がやりたいことを説明した。
「あんたホントに、やるの?」
「はい、そのつもりです、来月、フィリピンに行って現地を視察します」
菊池さんは、立ち上がり。一枚の地図を手にして戻ってきた。
「ここがね、バギオで中心地、イチゴはこの隣のエリアのトリニダットというとこで
作っているんだよ。」という。
私はフィリピンの地名はまだ聞きなれてないこともあって、
さっぱりわからないので、ただ説明を聞いた。
要約すると。
・菊池さんは20年来、フィリピンから実習生を受け入れている。
・その実習生のほとんどが、トリニダット州から来ている。
・実習生のほとんどが実家が農家
・その実習生は、州か市町村からの推薦付、だから安心
・菊池さんは、毎年、フィリピンに戻った実習生を訪ねて支援している
「私たちは実費でトリニダットにいって、戻った子たちの支援をしているのだよ。
そんな交流もあって、今では南牧村とトリニダットは姉妹都市提携していて、
実習生の交換事業になっているんだ。」
菊池さん、すごいじゃん。
「そうやって現地に通わないと、なかなか、こんな田舎にはフィリピンの人は
来てくれないんだよ」
過疎化が進む田舎での問題が、改めて浮き彫りとなった。